後継者不足に陥らない会社には、共通点があると私たちは感じています。私たち事業承継センターが日々の支援の中で目にする特徴は、特別な才能や資金力ではなく、「早く始めて、対話と準備を積み重ねている」ということだと感じています。本コラムでは、その8つの共通点をチェックリストの形で紹介します。自社が今どこまでできているかを点検する道具として、ぜひお使いください。
「後継者不在率50.1%」の内側にある差
帝国データバンクが約27万社を対象に行った2025年の調査(全国「後継者不在率」動向調査)では、後継者が「いない、または未定」の企業は50.1%でした。この割合は7年連続で改善しています。一方で、小規模企業に限ると57.3%と、依然として高い水準にあります。
ただし、この数字は「半数の会社がすぐ廃業する」という意味ではありません。この中には、まだ後継者を決める時期に来ていない会社も含まれています。問われているのは、決める時期が来たときに「選べる状態」になっているかどうかです。決める時期が迫ってから慌てて整えるのか、それとも普段から少しずつ整えておくのか。私たちが支援の現場で目にするのは、後継者不足に陥らない会社は、その選べる状態を長い時間をかけてつくっている、ということです。
後継者不足に陥らない会社の8つの共通点
以下の8項目は、私たちが現場で感じる主な特徴です。全部に当てはまる必要はありません。まずは、自社にいくつ当てはまるかを数えてみてください。
1. 経営者が元気なうちから承継の話を始めている 「まだ早い」と感じる時期に始めるからこそ、時間を味方につけられます。元気なうちに話し合いを始めた分だけ、準備に使える時間が長くなり、途中で立ち止まって考え直す余裕も生まれます。
2. 後継者候補に早い段階で意思を確認している 「いずれ継いでくれるだろう」という思い込みのままにせず、本人の意思を早めに確かめています。意思の確認が早いほど、その後の対話と準備に時間をかけられます。仮に本人が迷っていると分かった場合でも、早く分かれば、それだけ次の道を考える時間が残ります。
3. 後継者に仕事だけでなく、判断する機会を与えている 仕事を任せることと、判断を任せることは別のものです。後継者が自分で決める経験を積める場を、意識してつくっています。決める経験の積み重ねが、承継後の経営を支える土台になります。
4. 経理や契約関係が整理され、会社の状態が分かりやすい 引き継ぐ側から見て会社の状態が分かることが、承継の話を具体的に進めるための土台になります。逆に、会社の状態が見えないままでは、引き継ぐかどうかの判断そのものが難しくなります。
5. 特定の経営者一人だけに仕事や人脈が集中していない 経営者一人に仕事や人脈が集中していると、その人が抜けたときの穴が大きくなります。集中を減らしておくことが、引き継ぎやすさにつながります。これは短い期間で変えられるものではないからこそ、早くから意識しておきたい項目です。
6. 技術、顧客情報、仕事の進め方を記録している 事業承継とは、単に社長を交代することではなく、技術、仕事の仕組み、従業員、お客様や取引先との信頼、会社の歴史や理念という「目に見えない資産」まで次の世代へ渡すことです。記録は、その目に見えない資産を渡せる形にする作業です。経営者の頭の中にしかない情報は、渡したくても渡せないからです。
7. 「親族が継ぐ」という一つの方法に限定していない 承継の方法を一つに決めつけず、複数の可能性を視野に入れています。選択肢を残しておくこと自体が、後継者不足への備えになります。一つの前提が崩れたときにも、初めから考え直すのではなく、別の可能性の検討へ移れます。
8. 特定の専門家一人に任せきりにせず、必要な人へ早めに相談している 税理士、金融機関、弁護士、事業承継の支援者など、必要な相手に早めに相談しています。一人に任せきりにしないことで、それぞれの立場からの視点を得られます。
8つを見渡すと、大きく3つのまとまりが見えてきます。1〜3は後継者との「対話」、4〜6は会社の「見える化」、7〜8は「選択肢と相談相手を広げること」です。どれか一つの分野に偏っていると感じたら、残りの分野が次の課題の候補になります。そして、この3つはいずれも一朝一夕に仕上がるものではありません。だからこそ、早く始めて積み重ねること自体が、いちばんの備えになります。
私たち自身も2018年に代表者を交代しました
このチェックリストは、机上で考えたものではありません。私たちの会社も2018年に代表者を交代しています。事前に計画を作り、先代と後継者が何度も話し合ったことで、交代自体は混乱なく進みました。振り返れば、この2つは上で挙げた共通点と重なります。計画を作ることは準備そのものであり、何度も話し合うことは対話そのものです。「事前の計画」と「重ねた対話」――この2つが、上に挙げた共通点の根っこにあるものだと、自分たちの経験からも感じています。
事業承継は「最後の日のイベント」ではありません
チェックリストで当てはまらない項目があっても、悲観する必要はありません。8つの共通点はいずれも、今日から取り組み始められるものです。一度にすべてを整える必要もありません。むしろ、当てはまらなかった項目こそ、自社の次の一手の候補だと考えて、一つずつ手をつけていけば十分です。
つまり、事業承継は最後の日のイベントではなく、長い時間をかけた対話と準備の積み重ねです。代表を交代するその日ではなく、そこに至るまでの日々の対話が承継の中身をつくります。始めるのに、早すぎるということはありません。そして、積み重ねた対話と準備は、決める時期が来たときの「選べる状態」につながっていきます。
チェックリストを試して気になる項目があった方は、どこから手をつけるべきか、私たち事業承継センターにお気軽にご相談ください。状況の整理からお手伝いします。ご相談はこちら(お問い合わせフォーム)
一次資料
- 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」 https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
- 事業承継センター株式会社「事業承継とは?」 https://www.jigyousyoukei.co.jp/what_jigyoshokei/
最終確認日: 2026年8月15日