本シリーズは、事業承継センター取締役・東條裕一が、経営者から聞いた言葉と、経営者として伝えたい言葉を書き留めた「勇気をもらう経営者の言葉」を、一言ずつコラムとして再構成したものです。志や覚悟、そして勇気を、後継者のみなさんと分かち合えればと思います。
6割7割わかったら進んでみる。10割わかって進むより上手くいくはずだ
なぜ、この言葉なのか
「ムダとわかるまでやればいい」という前の言葉と重なる部分がありますが、ここではさらに、情報収集と判断のタイミングに焦点があたっています。
情報が足りないと感じるほど、人は動けなくなります。しかし、完璧な情報を待っていては、いつまでも一歩を踏み出せません。
後継者として意思決定を任される場面が増えていくと、この「どこまでわかったら動くか」という感覚が、経営のスピードを左右するようになります。
特に、慎重で真面目な後継者ほど、判断材料が揃うまで動かないという姿勢を、正しいことだと考えがちです。しかし、その姿勢が、かえって会社のスピードを鈍らせてしまうこともあります。
頭の良い人ほど、情報収集に時間をかけてしまう
頭の良い人ほど、情報収集に時間をかけます。ああでもない、こうでもないと思案に暮れ、もっと良い情報があるはずだと探し続けます。しかし、ぴったりとした情報など、いくら探しても出てこないことが多いものです。
誰もが、手に入れられる不完全で限られた情報をもとに判断しています。だから、とにかくある程度わかったら、とにかく進んでみる。試みてみることです。
試みて出てきた結果こそが、一番の情報源になります。そこからまた修正してみる。それくらいの気軽さ、割り切り方が、経営のスピードをつくる要因となるのです。
10割わかってから動こうとすると、その間に状況そのものが変わってしまうことも少なくありません。6割、7割の理解で動き出し、進みながら軌道修正していく方が、結果として上手くいくことが多いのです。
情報を集め続けることは、一見、真面目で慎重な姿勢に見えます。しかし、それが「動かない理由」を探すための時間になってしまっていないか、後継者として自分自身に問いかけてみる価値はあると思います。
先代の判断を間近で見てきた後継者ほど、自分の判断に確信が持てるまで動きたくないと感じるものです。しかし、確信は、動く前ではなく、動いた後についてくることの方が多いのです。
6割、7割という感覚は、いい加減さの表れではありません。むしろ、完璧な情報などそもそも存在しないという現実を、正しく受け止めた上での割り切り方です。その割り切り方を持てるかどうかが、経営のスピードの差になって表れます。
後継者のあなたへ
判断材料が揃うまで待っていると、決断の機会そのものを逃してしまうことがあります。6割、7割わかったら、まずは進んでみてください。
進んでみて出てきた結果こそが、次の判断のための一番の情報源になります。完璧な情報を待つより、動きながら精度を上げていく方が、経営のスピードにかなっています。
あなたが今、情報が足りないからと足踏みしていることは、何でしょうか。
本記事は、事業承継センター取締役・東條裕一の原稿「勇気をもらう経営者の言葉」をもとに構成しています。