本シリーズは、事業承継センター常務取締役・東條裕一が、経営者から聞いた言葉と、経営者として伝えたい言葉を書き留めた「勇気をもらう経営者の言葉」を、一言ずつコラムとして再構成したものです。志や覚悟、そして勇気を、後継者のみなさんと分かち合えればと思います。
「要するにどういうことか」と自分に問え
なぜ、この言葉なのか
日々の業務では、目の前の問題を一つひとつ片づけることに追われがちです。しかし、それだけでは、次々と現れる課題を追いかけ続けるだけになってしまいます。
社長という仕事に求められるのは、個々の問題を掘り下げることだけではありません。少し距離を置いて全体を見渡し、「要するに何が問題なのか」を捉え直す視点です。後継者として日々の実務に向き合う皆さんにこそ、意識してほしい考え方です。
現場に近い立場で仕事を覚えてきた後継者は、目の前の一つひとつを丁寧に処理することが評価されてきたはずです。だからこそ、経営を担う立場になったときに、視点を切り替える必要があることを、まずお伝えしたいと思います。俯瞰力は、現場での経験の延長線上にあるものではなく、意識して身につけていく力だからです。
細々とした問題を追うだけでは、モグラたたきになる
細々とした問題をひとつひとつつぶしていくことは、もちろん必要です。しかし、それだけを繰り返していても、問題はまたどこかから顔を出します。モグラたたきのように、次から次へと対応に追われることになってしまいます。
そんな時に、ひとつ間をおいて、「要するに何が問題なのか」「ここから何が言えるのか」と考えてみる。それだけで、個々の問題の関連性や相関性が見えてきます。木を見るのではなく、全体の絵づらを見てみるのです。
私も、優秀な上司から「要するに何なんだ」とよく質問されました。今から考えると、もっと全体像を見てポイントを捉えろ、という意味だったのだと思います。優秀な経営者は、いつも「要するに」と自問自答していますし、部下にも同じように質問しています。
この視点は、意識して訓練しないと身につきません。たとえばメールで文章を書くときに、要点を3つの項目にまとめてみる。そうした小さな積み重ねが効果を持ちます。そして、部下にも常に問いかけてほしいのです。「要は何が言いたいんだ?」と。
後継者の立場では、報告を受ける機会も、報告をする機会も、両方あると思います。どちらの場面でも、「要するに何なのか」を一言で言えるかどうかを、自分自身に、そして相手にも問いかけてみてください。それを繰り返すうちに、物事を俯瞰する力は少しずつ鍛えられていきます。
細かな問題に振り回されている自覚があるときほど、この訓練は効いてきます。目の前の一件一件に対処する力と、全体を俯瞰して要点を掴む力は、まったく別の筋肉です。後者は、意識して使わなければ、いつまでも育ちません。
後継者のあなたへ
日々の業務に追われていると、目の前の問題をつぶすことで精一杯になりがちです。しかし、たまには手を止めて、「要するに」と自分に問いかけてみてください。
その一問が、あなたの視野を、個々の問題から会社全体へと引き上げてくれます。細かな対応に追われている自分に気づいたときこそ、意識して立ち止まる合図だと捉えてみてください。
経営者として求められる思考力を身につけるために、これからは常に唱える言葉…・
「要するに」
「要するに」
「要するに」
本記事は、事業承継センター常務取締役・東條裕一の原稿「勇気をもらう経営者の言葉」をもとに構成しています。